今年で第17回目となる「和光技研技術発表会」を平成25年6月8日(土)に開催いたしました。本年度は、構造物の維持管理に関して専門的な知見をお持ちの北見工業大学宮森保紀先生を特別講師としてお招きして御講演いただきました。
また、BCP(事業継続計画)や情報セキュリティ対策、著作権に関するQC活動成果報告会も併せて実施しました。
■特別講演
構造物の維持管理と安全性確保のためのセンサ技術の動向
北見工業大学 社会環境工学科 准教授
宮森 保紀 氏
土木構造物を適切に維持管理していくためには調査点検が不可欠であり、従来から人間による目視評価が実施されてきている。センサーによる測定結果に基づく評価が普及しつつあり、相互補完的な役割として各種センサーに対する期待が高まっている。
本御講演では、さまざまな構造物で活用されているセンサーの事例をご紹介いただいた。また、近年発展がめざましいスマートセンサー技術に関して概要と今後の発展性ついて御講演いただいた。
■社内技術士講演
東日本大震災 津波被害状況報告
技術管理部 宮川 隆雄
東日本大震災の約半年後となる平成23年9月19日~平成25年9月24日にかけて岩手県八戸市から宮城県気仙沼市に至る三陸沿岸の被災地を視察してきた。宮古市在住の被災した知人との再会や、過去の津波災害で復興に尽力した普代村・和村幸得元村長、宮古市田老(旧田老町)関口松太郎元村長の軌跡を訪ね、構築された水門や防潮堤の効果を確認してきた状況と、被災地の人達が復旧・復興に前向きに取り組んでいることについて報告した。
■技術テーマ部門
砂防えん堤に係わる点検調査・補修業務の実施事例と今後の展望
河川砂防課 楠 馨
対象となる砂防えん堤は、堤体の嵩上げを行うにあたって、既設えん堤の有効利用、事業費の縮減が求められていた。しかし、当該えん堤は施工から30年以上が経過しており、その表面にはコンクリートの劣化を示すひび割れや剥離等が多数確認されていた。堤体表面の目視調査と、コンクリートの劣化要因を把握・分析するための点検調査を行い、既設利用の可能な範囲や取り壊し部の補修工法等について検討を行った。
本発表では、主に砂防えん堤における点検調査の方法と補修の実例について事例報告を行った。
河川改修発生土を対象とした土壌汚染状況調査と措置の事例
防災地質課 小岩 晃
調査対象地では、河川改修工事(河道拡幅)が計画されており、建設発生土量は約10万m3に達する。工事に先立ち、平成22年度に土壌汚染対策法に基づいた重金属等の土壌汚染状況調査が行われ、自然由来の土壌汚染(鉛・砒素)が確認された。平成23年度から平成24年度には、発生土処理対策として不溶化処理検討が実施された。
本発表は、土壌汚染状況調査や不溶化処理検討で確認された土壌特性と不溶化材の選定について、現時点の見解をとりまとめたものである。
堤防・樋門の新耐震設計法について
水工課 北村 明
従来、河川構造物ではレベル1地震動に相当する震度を用いて耐震設計が行われてきたが、度重なる深刻な地震災害への対策が重要視され、平成19年3月に河川構造物のレベル2地震動に対する照査指針として「河川構造物の耐震性能照査指針(案)」が策定された。
本発表は、耐震性能照査のポイントを示すとともに、レベル2地震動に対する静的FEM及び縦方向解析による函体の耐震設計、津波対策としての樋門自動化の実際例を示したものである。
特定外来生物オオハンゴンソウの対策について
環境計画課 宮本 大
特定外来生物に指定されているオオハンゴンソウは、全道各地に生育しており、工事の現場内においても多数確認されている。本発表では、O川において行った対策を例に、特定外来生物オオハンゴンソウ駆除の実施状況の事例を紹介し、現地調査・計画・設計上の注意点を発表した。
Small helicopter aerial photography(SHA-PHOTO)による空中写真について
測量調査部 三浦 大
ラジコンヘリコプターによる空中写真撮影を自社で行えるかを検討した。
本来、空中写真を撮影する場合はセスナ機による撮影が多いが、ラジコンヘリコプターによる撮影が近年多くなってきている。公共事業自体も大型物件から極小的な物件が多くなってきていることもあり、こういった極小的に出来る空中写真も需要が増えると期待している。
この発表は、撮影に関するノウハウと公共測量図化への対応可能性の検証を行ったものである。
CIMに関する最近の話題と当社の取り組み事例
情報システム室 香川 誠
近年、限られた公共投資の中で効率的に社会資本整備を行うため、建設事業の計画から調査、設計、施工、維持管理、更新という一連の過程において、情報の一元化や最適化により公共事業の品質確保やトータルコストの縮減を図る目的で、CIMが試験的に導入されつつある。
本発表では、国土交通省の動向を紹介し、さらに当社で行った三次元設計の事例を報告した。
舗装の構造設計について
道路・構造課 八木澤 博文
飛行場の滑走路は老朽化にともない、目地部に段差や各所にクラックが生じていたことや冬期間、滑走路に散布する融雪剤の影響によりコンクリート舗装版の表面にポップアウトする現象が現れていた。また、コンクリート舗装厚が設計対象機である飛行機が離着陸するには不足していた。
これらの問題を解決するため行った滑走路の舗装構造設計について事例紹介を行った。