今年で第17回目となる「和光技研技術発表会」を平成27年6月13日(土)に開催いたしました。
本年度は、水文学、河川工学に関して専門的な知見をお持ちの北見工業大学 早川博先生を特別講師としてお招きして御講演いただきました。
■特別講演
沖積河川の河床変動-流路幅と河床低下-
北見工業大学 社会環境工学科 教授 早川 博 氏
従前の河道整備における蛇行河川の直線化と、現在に至るまでの河道の変遷および今後の河床変動傾向についてご紹介いただいた。
■社内技術士講演
石狩川下流における治水対策の歴史
―氾濫原の安全基盤は如何にして構築されたか―
技術管理部
石狩川下流における明治草創の氾濫原開発から1970年代の連続堤防整備、その後の堤防強化などによる安全基盤構築までの歴史を考証し、今後の治水対策の参考に資するものとして発表した。
■技術テーマ部門
桁下余裕高不足となる橋梁の施工計画
(ジャッキアップによる嵩上げ工法の採用)
技術部 道路・構造課 表 康則
道内の小河川K川の河川改修工事に伴って、既設橋梁の桁下余裕高が不足するため、既設橋梁の架替えまたは上部構造を1m嵩上げする必要があった。
本事例では改修費用が安価な嵩上げ工法が望まれたが、既設橋梁が2 径間単純ポステンT桁のコンクリート構造であるため重量が大きく、通常の嵩上げ工法では施工が困難だった。
本発表は、全国でも例の少ない1mのジャッキアップ工法を採用して嵩上げを行い、既設橋梁を活用して効率的に維持管理する方法を提案し、またその方法が可能であることを実証した事例である。
ボーリング調査と孔内カメラを利用した舗装厚調査事例
技術部 防災地質課 宿田 浩司
本業務は、札幌市所管の幹線道路(L=1.9km)において、舗装構成の妥当性や補修の必要性、区間を把握することを目的に舗装厚調査を行ったものである。 舗装構成の確認は、一般に開削調査で行うが、開削復旧に伴う段差によって振動・騒音の発生や積雪冬期の交通渋滞・事故など沿道環境に配慮する必要があった。
本発表は、調査品質を維持しつつ沿道環境への影響を最小限にするため、特殊ボーリング機械と孔内カメラ観察を利用した調査手法を提案・実施した事例紹介である。
作業手法による誤差量の比較
測量調査部 長岡 克人、川本 貴大
高い精度を必要としない測量を行う場合には、基準点測量や水準測量が設計項目から除かれ、GPS(GNSS)で成果付けを行うといった事が多々ある。このため、効率よく作業を行うためには、調査結果の利用目的に見合った調査方法や調査レベルを選定する事が重要となってくる。
本発表では、観測手法、測量機器、観測条件などによって生じる座標や標高の誤差量について検証した結果を紹介した。
建物移転工法の検討について
建築補償部 横田 貴史
公共事業において支障となる建物の所有者へ移転料を補償し、建物を起業地外へ運び去る移転補償であるが、その移転料を決定する上で『基礎』となる移転工法の検討は、個別・主観的な事情や意向に囚われない客観的なものである必要がある。
実務においては、フローチャートによって客観性を保ちながら、「有形的」・「機能的」・「法制的」・「経済的」各検討を経て決定に至る。
本発表は当社での業務事例を交えながら、工法決定に至る経緯を整理したものである。
砂防工事によるオジロワシの生息環境への影響評価
技術部 環境計画課
北海道名寄市の北部にある渓流では、土砂災害防止のため、砂防えん堤が整備されることとなった。整備に先立って行われた環境調査では、工事実施地点の周辺で天然記念物であるオジロワシの生息が確認された。
工事は、オジロワシの生息に影響を与えないように進める必要があるため、工事にあわせたモニタリング調査を実施することとなった。
本発表は、モニタリング調査の結果を基に、工事実施によるオジロワシへの影響の有無を評価したものである。
導流堤の維持管理事例と今後の展望
技術部 水工課 麻生 直斗
事例となる導流堤は、昭和54 年に当社において設計された二重矢板式導流堤である。施工から30 年以上経過した同施設は老朽化が著しく、機能面および管理面から多くの問題を抱えていた。
本業務は、限られた予算の中で施設の機能を回復し、効率的・効果的な維持管理の提案を行ったものである。
本発表は、今後ますます増大が予想される維持業務へ対応するため、老朽施設の管理実態と問題点について理解を深めていただくことを目的とする。
「土砂災害防止法」および「水防法」改正と今後の展望について
技術部 河川砂防課 宮本 大
記録的な豪雨災害に対応するため、国土交通省では平成26 年および平成27 年に土砂災害防止法および水防法の改正を行い、更なるソフト対策の拡充を図っている。
本発表では、土砂災害防止法および水防法の概要や改正内容を学んで頂くとともに、「法改正が当社受注業務に与える影響」や「今後、発注が予想される業務」の説明を行い、今後の技術営業展開の材料としても活用できる情報を提供したいと考えている。