■対象河川の状況(改修前)

対象河川は十勝川の2次支流であり、周辺農地への洪水防御を目的とした改修工事をおこなうこととなりました。河道の一部は、十勝川の旧河道にあたり、平常時はほとんど流れのない湖沼のような状況で、河道の滞水箇所ではトンボ類が多数生息しています。河道内には水生植物が広く分布し、様々な種類の野鳥が訪れて、採餌や休憩の場所として利用しています。このため改修工事後にも現況と同様の豊かな自然環境の回復が求められていましたが、併せて河床に1mもの厚さで堆積しているヘドロの処理をどうするかという問題点の処理も行いました。

○現況が計画のお手本

最初にこの川の現況を手本に、改修区間を①広い開放水面で水深の深い『湖沼形態』、②低水路幅の狭い区間にあたる『水路形態』、③水生植物が広く繁茂している『湿地形態』、の3つに大きくゾーン分けをし、改修工事後にもこれらを復元し、移植による植生の早期回復を図ることで、トンボ類や野鳥の生息環境を確保する必用があると考えました。


写真1 改修前の起点付近の河道状況:湖沼形態


写真2 改修前の起点から1.2km上流:水路形態


写真3 改修前の起点から0.8km上流:湿地形態

■3つの形態の復元計画

常時水量は少ないため、現況水面幅に合わせて低水路を計画河床高よりも低く掘り込み、形態の主要変化点には縦断規制として止水矢板を配置し、ポンド化することで湖沼・水路・湿地の3つの形態を改修後にも復元できるように計画しました。
流速が遅く、洪水後の実績でも河岸欠損は認められないので、護岸は構造物周辺のみとし、植生の活着により河岸を流水から守る計画を提案しました。

○ヘドロ処理及び植生移植方法の提案

河床に堆積した厚いヘドロ層は除去しても産廃となってしまうので、表層混合処理を行い、改良後に盛土材として再利用を行う計画としました。植生の移植はバックホーで根の付いた土ごとすき取り、河道掘削後、元の場所に戻すというちょっと大胆な方法を提案し、自生種の早期回復を目指しました。
施工計画では、アルカリ性の強いヘドロの改良固化材流出を防止する必用性や、植生移植作業も考慮して、自立式鋼矢板による半川締切工法を用いて完全ドライワークで作業を行う計画としました。


写真4 改修後の写真1地点 :湖沼形態が復元しています


写真5 改修後の写真2地点 :水路形態が復元しています


写真6 改修後の写真3地点 :湿地形態が復元しつつあります

■その後の追跡調査と施工フォロー

その後の『植生回復状況の確認と好ましい移植方法の提案』の詳細については、同僚である環境調査担当者が行っているのでそちらの事例紹介に委ねたいと思います。

結果としては、河川フォーラムなどで発注者から成功事例として取り上げて頂いたこともあり、良い川づくりができたのではないかと思っています。

文責:熊谷研二